第9回 「審査官の徒弟制度について」
コラム
~元特許審査官のつぶやき~
エピファニー特許事務所様への寄稿
第9回 「審査官の徒弟制度について」
新年度なので、新人が特許庁でどのように成長していくのかについて書いてみようと思います。
近年は各審査室に1名ずつの新人が配属されていました。
入庁時の新人のポジションは審査官補心得。
まさに審査官の卵です。
ここから彼ら彼女らの試練が始まります。
審査官補心得達は、まずは審査官補を目指します。
ここで新人とバディーを組むのが指導審査官で、審査室の中でもベテランの審査官が任命されます。
指導審査官は、業務について何も知らない審査官補心得と一対一で組み、審査のイロハをたたき込んでいきます。
審査官補心得を修了すると、心得が外され、審査官補となります。
審査官補となるころには、研修用の審査案件を実際に審査していきます。
指導審査官は、彼らの審査を常にサポートし、チェックします。
座学での法律研修も当然ありますが、やはり実際の案件を審査しないと、特許法や審査基準を使えるようにはなりません。
また、審査官補2年目あたりからは、審査室への貢献も求められるようになります。
そして、2年目ともなると、指導審査官との関係はさらに深いものとなり、全案件で協議を行いながら審査を進めていきます。
ただし、審査官補にはまだ決裁権限はありません。
審査にはすべて指導審査官の最終判断が反映されます。
このような過程を経て、さらに庁内の審査官登用試験をパスして、晴れて審査官に昇任することができます。
そしてようやく拒絶理由通知書や特許査定に自分の名前が冠されるようになるのです。
入庁から一人前の審査官になるまで、指導審査官と二人三脚で一般的には約三年。このような徒弟制度は、一般的な企業ではまず見られないと思います。
たいていは、最初に全体の新人研修があり、その後、現場でのOJT、となるのではないでしょうか?
特許庁には今でもこのような徒弟制度が現存しており、非常に密な修行の期間が存在します。
そして、審査官として独り立ちした後も、指導審査官との切っても切れない絆は連綿と続いていきます。
なにしろ審査官になるために、あれだけ濃密な日々を共に過ごしたわけですから・・・
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