2025/04/30
クレーム 抽象化と分割 出願の秘訣 #クレーム 抽象化 分割出願 #クレーム #抽象化 #分割出願
音ゲー特許に学ぶ「抽象化」と「出願戦略」
~beatmania・DDR・GUITARFREAKS・太鼓の達人から考える~
1. 音楽ゲームと特許出願:最初に立ち返るべき視点
音楽ゲーム、いわゆる「音ゲー」は、1990年代末から2000年代初頭にかけて、アーケードゲームとして広く普及しました。
beatmania(ビートマニア)
Dance Dance Revolution(ダンスダンスレボリューション/DDR)
GUITARFREAKS(ギターフリークス)
太鼓の達人
いずれもプレイヤーが音楽に合わせて操作を行い、画面の指示や評価によってプレイ体験が構成されるという共通点があります。
こうした共通構造がある中で、どのレベルで構成要素を抽象化して請求項に落とし込むかは、特許の権利範囲を左右する重要な判断になります。
2. DDRの出願と「案内手段」の抽象性
たとえば、Dance Dance Revolution(DDR)に関する特許(特許第3003851号)では、以下のような構成が記載されています。
音楽出力手段
踏み台部を有する床盤面体
画面にスクロール表示される踏み動作指示(案内手段)
一方で、出願当初の請求項では、以下のように構成がより抽象的に記載されていました。
音楽出力手段と、踏み台部を有する床盤面体と、踏み動作指示を行う案内手段
この「案内手段」が具体的にどのような表示形式を取るかは明記されておらず、その結果、引用文献(実全平01-037269号)に記載された「床面ディスプレイによる足位置表示」との同一視がなされ、新規性が否定される結果となっています。
3. ではどう書けたか?—抽象化の試案
もし、より後発のゲーム群――たとえばGUITARFREAKSや太鼓の達人のような、手やバチによる操作も含むもの――まで視野に入れていたとすれば、以下のような抽象化も可能だったかもしれません。
【抽象化による請求項案】
音楽出力手段と、
複数の操作部と、
操作部に対応するマーク等が画面上をスクロール表示され、
プレイヤーに操作タイミングを視覚的に案内する手段を備える音楽ゲーム装置
このように「操作部」や「視覚的なタイミング指示」といった要素にまで抽象化しておくことで、より広範な音ゲー全体に対応しうる可能性があります。
4. ただし「beatmania」は先行している
この抽象化案を検討する中で、避けて通れないのが**beatmania(ビートマニア)**の存在です。
beatmaniaは1997年に稼働を開始しており、上記のDDR(1998年)よりも先に登場しています。そしてその特許(特開2000-184127号)でも、**「マークがスクロールし、操作タイミングを指示する」**という構成がすでに開示されています。
そのため、先ほどの抽象化案は、beatmania特許との新規性・進歩性の観点で衝突する可能性があることに留意する必要があります。
実際、このbeatmania特許では、請求項中に:
トラック構成によるマーク表示
操作タイミングを視覚的に示すインジケータ
評価手段および評価表示手段
演出効果発生手段
などが組み込まれており、表示の仕方に焦点を当てた技術的工夫がポイントとして認定されています。
5. 審査での引用文献と進歩性の判断
beatmaniaの審査過程では、タイピング練習装置(実開平05-066662号)が引用されています。これは、歌詞を表示しながら、入力された文字との一致を判断するというもので、プレイヤーの操作内容に応じて音や表示が変化する構成です。
ここで問われたのは、「操作の正否によって反応を変える」という一般的なインタラクションに、音ゲー的な特徴をどこまで重ねられるか、という点であると思います。
このような事例からも、特許請求項のどこに“技術的特徴”を置くかが極めて重要であることがわかります。
6. ソフトウェア関連発明で意識したいこと
音楽ゲームのような分野では、次のような観点が有効な出願戦略の一部となるかもしれません:
表示形式や入力方式の多様化を見越した抽象化
構成要素の要否を精査したうえでの構成選定
初期出願で広く取り、必要に応じて限定補正や分割出願
特にゲームやソフトウェアの世界では、同じ目的を異なる手段で達成する後発例が登場する可能性が高いため、柔軟性を持たせた出願が長期的に活きることもあると考えられます。
7. ひとまずのまとめ
本稿は、音楽ゲームに関連する過去の特許事例を題材に、抽象化や出願戦略のあり方を再考する一つの視点を提供するものです。
すべての出願に当てはまる話ではありませんが、構成にとらわれすぎず、技術的特徴をどこに置くか、どう広げるかという点は、ソフトウェア系発明全般にも通じるテーマです。
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