第14回「どの審査室で審査するか?大問題です」
コラム
~元特許審査官のつぶやき~
エピファニー特許事務所様への寄稿
第14回「どの審査室で審査するか?大問題です」
特許庁には約40の審査室があります。
各審査室は技術ごとに大きな括りで分けられており、1つの審査室には、大体30―40名くらいの審査官が在籍しています。
では、出願された特許案件はどの審査室で審査されるのか?この運命のいたずらともいうべき選別によって、最終的に特許査定になるか否かまで影響が及ぶことがあります。
自身の審査室で担当すべき案件かどうか、最終的な決定権を持っているのは、各審査室の担当審査官です。
しかし、ここで、問題が生じる場合があります。近年の特許出願においては、単一の技術分野だけに閉じている案件は少なくなっており、技術が多岐の分野に亘っているが故に、担当審査室の候補として複数の審査室が挙がってくるケースが多数見受けられます。
発明のポイントがどこにあるのか?複雑な発明になるほど、担当審査官達の主張も異なり、各審査室間で意見がぶつかり合います。
物理的な構造、化学的な物性、情報処理のステップ、システム全体の構成など、請求項の記載だけではなく、発明の課題や効果も勘案し、最終的にどの審査室が案件を担当するかを決めなくてはなりません。
私の経験から申し上げても、自分の専門とは異なる技術分野の案件を審査する場合、審査は厳しい方向、つまり特許査定につながりにくくなりがちです。
審査官は理解の薄い発明に特許権を付与するのが怖いので、特許査定か否かの判断がより安全側になる傾向があるように思います。
よって、適切な審査室で、その分野のエキスパートである審査官に審査をしてもらうことが、特許査定率を向上させる要因だと言えるでしょう。
では、適切な審査室で審査をしてもらうにはどうしたらよいのか?
例えば、請求項は上位概念で広く書いたとしても、明細書の中味は実施形態に落としてしっかりと書き込むことで、審査官も技術分野をより適切に判断し得るようになります。
逆に、明細書の中味がぼんやりしていると、相応の判断がしづらく、適切な審査室が見つからないまま、特許庁中の審査室を難件として回遊することになり、最終的にも良い結果が生まれづらくなると思います。
第1回コラムで書いたように、審査官も人間なので、得体の知れない発明を審査したくはありません。ましてや恐ろしくて、広い権利範囲での特許査定など、二の足を踏んでしまうのも無理のないことです。
運を天に任せるのではなく、明細書の作成段階よりどの審査室をターゲットにするのかという視点を持つことで、出願人側も審査官の反応が予測しやすくなり、権利化への一助とすることができると思います。
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