第8回 「親ガチャならぬ審査官ガチャ」
コラム
~元特許審査官のつぶやき~
エピファニー特許事務所様への寄稿
第8回 「親ガチャならぬ審査官ガチャ」
親ガチャならぬ審査官ガチャ・・審査官の判断のバラツキについて書いてみます。
第6回でも触れた通り、特許庁の審査官は法的に「独立した行政庁」という位置付けで、特許の審査について大きな裁量権を持っています。
つまり、審査官1人の判断により特許査定となるのか拒絶査定となるのかが決まるのです。
これは一般的な企業ではあまり考えられない決済プロセスかと思います。
企業で組織的な決定をする場合は、少なくとも上長の承認や複数の決済プロセスが介在するのが普通です。
しかし、特許庁の審査官は各個人が「独立した行政庁」であるため、上長等がその判断に対してNOと言うことは基本的にありません。
この独特な組織構造が審査官ガチャを生み出す背景となっているのです。
以前は、いわゆる特許派や拒絶派といわれる両極端な判断をする審査官が散見されました。
これは、処理件数のノルマが非常に高い時代に特に顕著であったと思います。
現状はどうかというと、当たり外れはもちろんあると思いますが、以前に比べると少し平均化しているのではないでしょうか。
審査官の判断のバラツキについては、出願人側からのクレームもこれまでに多く寄せられてきました。
特許庁サイドもこの点を重く見て、様々な対策を講じてきたと思います。
審査官個人がどのような立ち位置にいるのかをチェックするツールや案件協議などを通じてガチャが起こりにくい体制を構築してきました。
ただ、審査官によって、技術的バックグラウンドや審査の経験値に差があったり、条文の使い方が違ったり、発明に対し注目するポイントが異なったりするのは当たり前のことなので、厳密に金太郎飴的な審査が成されることは不可能だと思われます。
では、想定外の拒絶理由を受けた場合、どうすればよいのか。出願人側には臨機応変に対応することが求められますが、一番有効な手段はやはり面接審査かと思います。
できればオンラインではなくリアルで直接審査官の考え方を聞き、意見を述べる。
書面でのやりとりでは解決しない拒絶理由も面接審査で落としどころが見つかることも多々あります。
ガチャが外れたと思われた場合でも、審査官への違ったアプローチを検討してみると適切な権利範囲の確保につなげることができるかもしれません。
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