第7回 「審査官の深層心理2」
コラム
~元特許審査官のつぶやき~
エピファニー特許事務所様への寄稿
第7回 「審査官の深層心理2」
前回は、権利範囲の大きい特許を許可するときの審査官の気持ちを書きました。
今回は、難解な発明の審査をするときの審査官の深層心理について書いてみます。
発明を、これまでこの世の中になかった発想やひらめき、と定義するのであれば、その発明を文章化した特許出願の内容は、今まで読んだことがないような理解の難しいものとなるのも仕方のないところです。
実際、特許出願の明細書を何回読み直しても理解不能な発明が間々出願されます。
このような出願について「どのように審査をしたらよいものか?」と、審査官は頭を悩ませることになります。
審査官には処理ノルマが課せられており、一件の出願に莫大な時間を割くことはできません。
何度読み直しても理解できない発明のとき、時間がプレッシャーとなり、冷静な判断ができなくなってくることもあります。
こんなとき、審査官は出願人に対し、口頭で「この発明よくわからないからもう少し説明してー」と本当は言いたい。
けれども、いきなり電話をしたり、面接を申し込んだりするのは正直躊躇われると思います。
というのも、通常、審査官は書面で出願人とやりとりを行うことが基本となっているためです。
そこで審査官は、「この発明は明確ではない!」とか、「この内容では実施できない!」とか、ある意味言いがかりをつけることになります。
このような言いがかりは特許法に条文があるので、拒絶理由通知という形で書面にすることができます。
審査官に「明確ではない!」と言われれば、出願人は説明せざるを得ません。
しかし、審査官は内心では「理解できないのは私だけなのではないか?」とか、「私の頭が悪いせいではないのか?」とか、追い込まれた精神状態になっていることもあります。
出願人側からは審査官は何でも理解できるスーパーマンのように見えるかもしれませんが、特に最先端の分野や、アカデミックな内容の出願については理解に苦しむ場面も多々あります。
そして、プライドが高い審査官ほど素直に「わかりません、教えて下さい」とは言えず、「この発明は不明確である!」と、出願人側に責任を転嫁してしまうのです。
とはいえ、このような葛藤は審査官経験者にしかわからないものだと思います。
最近は「出願人と審査官とで密にコミュニケーションを取り、的確な権利範囲を設定しましょう」という流れになっているようですが、審査官自身はそう簡単には変われず、上記のような人間くさいところも、うまく意思疎通ができないところもあります。
前回も書きましたが、審査官の中身は人間であり、臆病で迷いもする一個人です。それを念頭に置いていただけると、書面や対面でのコミュニケーションをより有意義なものにすることができると思います。
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