第3回「審査官と同じ土俵で戦うには・・」
コラム
~元特許審査官のつぶやき~
エピファニー特許事務所様への寄稿
第3回「審査官と同じ土俵で戦うには・・」
審査官VS出願人・弁理士はフェアな戦いとは言えません。
審査官は安全な場所から、出願人・弁理士はリスクを背負って戦っています。だからこそ出願人サイドは審査官の思考回路を理解し、防衛・反論することが必須となります。
審査官は形勢が悪くなったとき拒絶理由の打ち直し、すなわちリセットボタンを持っていますが、出願人サイドはそうはいきません。対応が悪ければ形勢が悪いまま拒絶査定となります。
最近の審査では出願人に寄り添うという大義の元、コミュニケーションを重視しているようですが、大原則に変わりはありません。
この土俵でフェアに戦うには、審査官の思考回路を理解しておくことが大切です。
まずは一番重要な「新規性」「進歩性」の考え方です。
この「新規性」「進歩性」の考え方ができていないと、いくら長い明細書や権利範囲の広そうな請求項で審査を受けても全く歯が立たないことになります。
進歩性とは、前回のコラムで書いた発明の「光る部分」のことです。
「光る部分」とはすなわち、すでに知られている先行技術に対して飛躍している部分。いままでこの世の中に無かった技術的に尖ったところのことです。
ではまず始めに、審査官が特許請求の範囲や明細書を読んだときに発明についてどのような絵面を頭の中に描いているのか可視化を試みてみます。
シンプルに描けばこのような感じでしょうか。
先行技術が大地として存在し、その上に発明が山脈として積み重なっています。
そして、新規性、進歩性の境界線があります。
新規性なしの標高は低く、先行技術と同一(海抜0m)、もしくは先行技術と同等(標高100m以下)の発明であれば新規性はありません。当然進歩性をクリアする標高は雲の上に存在するのでこのような発明には進歩性もありません。
次に、新規性はあるが、進歩性はないなというイメージです。
発明全体として新規性のラインはクリアしていますが、特許請求の範囲や明細書等に記載された複数の発明のどのピークも進歩性ありの標高を超えていない状況です。
この状況は、拒絶査定方向に進む一番典型的なパターンです。
出願人や弁理士がしっかりと先行技術を調査していれば通常、新規性はクリアしているからです。
この進歩性なしの発明には複数のパターンが存在します。
先行技術に対し、単なる設計変更である発明や、周知技術を組み合わせただけの発明。もしくは、先行技術に他の先行技術を組み合わせた発明などです。
これらの発明は先行技術に対し、容易に発想できた発明として進歩性がないため拒絶理由が存在してしまいます。
次回は特許性がある進歩性ありの発明の複数のパターンを考えてみます。
山脈の形状によって、強い権利や広い権利もイメージできるかと思います。
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