ゲーム業界の知財 任天堂・株式会社ポケモンと、ポケットペア社

query_builder 2024/11/11
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ゲーム業界では、特許等の知的財産の保護がビジネス競争における重要な要素となってます。特に、特許を多く保有する任天堂のような企業は、他社の技術やコンテンツが自社の知的財産権を侵害していないかを緻密に監視していると思います。
その一方で、ゲーム業界に限られませんが、新興企業(スタートアップ企業)が、同様の競争力を持つことは、なかなか容易ではないと思います。ですがこういった企業が競争力を確保するためには、出願数は及ばなくても、やはり特許出願が有効だとも考えています。


最近話題になっているのが、任天堂・株式会社ポケモンと、ポケットペア社との「パルワールド」というゲームに関連した知財の問題です。任天堂・株式会社ポケモンが、自社特許を侵害しているとして、ポケットペア社を相手に提起された訴訟になります。少しずつWEB上に情報が出てきているようです。個人的に、落とし所はどの辺りに設定しているのか、ということが気になりましたが、現状、損害賠償(任天堂・株式会社ポケモンそれぞれに500万円ということでした)に加えて、差止請求が入っているようです。


任天堂 https://www.nintendo.co.jp/corporate/release/2024/240919.html
株式会社ポケモン https://corporate.pokemon.co.jp/media/news/detail/346.html
ポケットペア https://www.pocketpair.jp/news/20241108?lang=ja

任天堂のプレスリリースでは、「長年の努力により築き上げてきた・・・」という言葉があり、ゲーム業界を牽引してきた企業としての誇りや強い意思、自信を感じました。

私自身も、子どもの頃には(というか今もですが)、スーパーマリオブラザーズをはじめとするゲームには大変お世話になり、本当に楽しませてもらった記憶があります。任天堂は、本件に限らず、多数の特許出願をしており、知財に相当に力を入れている企業だと思います。そして、近年、訴訟で勝訴していますし、表にでていない交渉も多数あるでしょうから、経験値の面でも相当に積み上がっていると思います。

一方で、ポケットペア社は、「パルワールド」というゲームを通して、興味深いゲーム体験を提供し、凄まじい速度(外国でも)でファン層を広げているのは間違いなさそうです。近年は、Youtuber等による配信を意識した、あえてプレイヤーに自由の余地を残したゲーム作りというのも重要なようで、そういう部分の作り込みもファン層を広げる要因になったようです。世界的ヒット作であるマインクラフトも、作り込み過ぎていない印象を持ち、Youtuber等の実況者は色々と面白い動画を作成してそれが相乗効果になっていると思われます(実際、家族がマインクラフトをプレイする実況者の動画を食い入るように見ていて人気があるのだと実感します)。

この訴訟がどのような経過を進むかを見守っていますが、ゲーム業界にとっても特許取得はとても重要だと感じずにはいられません。


ゲームの特許は、ソフトウェア・システム・ITといった技術分野に属すると思います。こういったソフト系の技術分野の特許にも様々な種類があると整理でき、例えば、技術的(学問としても)に高度な処理に特徴をもたせるような特許もあれば、技術的にはとてもシンプルでもその組み合わせに妙があるような特許(ビジネスモデル特許)といった具合です。

ゲーム業界での特許取得を考えたとき、企業に応じて様々な戦略があるのではないでしょうか。例えば、ゲームの処理やシステム自体に関わる技術特許は、エンジンやグラフィック処理、ネットワーク構造の効率化など、純粋な技術力が試される領域といえます。このような特許は、技術が進歩する中で高度な開発が求められると思います。特許は公開されて第三者利用がされてしまうので、高度過ぎる技術やノウハウは、そもそも特許化するべきなのかも検討に入る得ると思います。
一方で、シンプルながらもアイデアやコンテンツに独自性を持たせることで、特定の要素を保護する特許もあります。例えば、ゲーム内での特定のインタラクションや、UI等に独自の仕掛けがあるような場合、それらを特許として保護することで他社からの模倣を防ぎやすくなるのです。こうした特許は、技術的には高度ではなくても(もちろんその面白さに気がつくために膨大な資本や開発者の貴重な経験が活かされるのだと思われます)、ゲームのコンセプトやユーザー体験に付加価値を与える部分に焦点を当て、競争優位性を生み出す戦略として機能します。当方の感覚としては、ゲーム業界はこちらの特許の方が圧倒的に多く、侵害摘発もしやすく、権利取得に対する企業の納得感も高いのではないでしょうか。


日本は、表にでてくる事件(知財訴訟)自体が多くないと言われることがあるようですが、とはいえ少しずつ判例もでてきている状況です。判例によって特許明細書のドラフティングの仕方も変わってくることから、日々、明細書作成をする者の立場としても、判例にキャッチアップすることが欠かせないと感じています。

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