ECプラットフォームの「相乗り・模倣品」から自社商品をどう守る? 注目ニュースから学ぶ、これからのEC知財防衛戦略

query_builder 2026/08/19

はじめに:EC出品者と消費者を脅かす「模倣品横行」のニュース

以下のようなニュースが報道されました。


(朝日新聞 2026年8月19日 記事)
https://www.asahi.com/articles/DA3S16528921.html


この報道は、自社開発した医療機器の「模倣品(偽物)」を大手ECプラットフォーム上で大量に相乗り出品され、売上やブランド価値に甚大な被害を受けた国内の正規販売店が、対策を怠ったプラットフォーム運営会社を相手取って損害賠償を求めた裁判を取り上げたものです。


一審ではプラットフォーム側に数千万円規模の賠償を命じる判決が出たものの、その後の控訴審(二審)では賠償額が大幅に減額され、セラー側にとって極めて厳しい現実が突きつけられる結果となりました。


なぜ、明らかな模倣品が売り場に溢れていたにもかかわらず、プラットフォーム側の責任を追及することがこれほどまでに難しいのでしょうか。


そして、私たちEC事業者は、自社の商品をどのようにして守ればよいのでしょうか。


この裁判の判決から、これからのEC時代に必要な「知財防衛策」を紐解きます。



1. 判決が示した、プラットフォームを動かすための「高いハードル」


この裁判において、裁判所はプラットフォーム運営会社が模倣品の調査や削除を行う契約上の義務を負う基準として、非常に重要な判断を示しました。それは、


「単にセラーから『偽物が出回っている』と苦情(申告)があっただけで、プラットフォーム側が自動的に調査や削除の義務を負うわけではない」


という点です。


裁判所は、プラットフォーム側が動く義務が生じるのは、


「被害を受けたセラー側が、異なる(偽物の)商品が存在することについて『合理的かつ客観的な根拠』をあらかじめ提示した場合に限る」


としました。


被害に遭ったセラー側は、


   「独占販売契約を結んでいる」


   「購入者から『偽物が届いた』と写真付きのクレームが来ている」


といった事実を訴えましたが、これらはプラットフォーム側が客観的に確認できる情報ではないとして、義務を発生させる「客観的根拠」とは認められませんでした。


最大のボトルネックは、被害が急増していた最も重要な時期に、ブランド名に関する「商標登録がまだ完了していなかった(出願中だった)」という点にありました。



2. 「知財」こそが、プラットフォームを動かす唯一の鍵


裁判所のロジックを裏返せば、


「特許庁に登録された客観的な知的財産権の存在」


こそが、プラットフォームに模倣品の排除を法的に義務付けるための最も強力な武器(客観的根拠)になるということです。


これは商標権に限定されません。自社商品の強みや模倣のされ方に応じて、以下の知的財産権をあらかじめ取得しておくことが、ECプラットフォーム上での最強の防衛網となります。


① 商標権(ブランド名・ロゴを守る)

防衛の対象:

商品名、ブランドロゴ


ECでの役割:

同じ商品カタログページに勝手に割り込んで、自社のブランド名を無断使用して偽物を売る「悪質な相乗り出品者」を排除するための最もストレートな武器です。

多くのプラットフォームが提供している「ブランド保護プログラム」を利用するための必須要件でもあります。


② 意匠権(デザイン・外観を守る)

防衛の対象:

製品の独自の外観、形状、デザイン


ECでの役割:

近年、ブランドロゴを画像加工で巧みに消したり、別ページを立ち上げて製品の「見た目」をそっくりそのまま真似たコピー品(デッドコピー)を売る手口が増えています。 このような「見た目がそっくりな商品」に対しては、意匠権の登録番号を提示することで、外観の酷似を理由に迅速に出品を停止させることが可能です。


③ 特許権・実用新案権(技術・アイデアを守る)

防衛の対象:

製品独自の構造、機能、画期的な技術


ECでの役割:

他社が真似できない画期的な仕組みや、製品の利便性を向上させる独自の構造(例:パルスオキシメーターにおける、指のサイズに自動でフィットするアジャスター構造など)を保護します。 競合他社が自社独自の技術を模倣した製品を販売している場合、技術的侵害を理由に販売を差し止める強力な盾になります。



3. ECビジネスのスピードに負けない「事前の知財戦略」を

今回のニュースがEC事業者に突きつけた最大の教訓は、


「模倣されてから対策(出願)を始めても手遅れになる」


という点です。EC市場は展開のスピードが極めて早く、一度ヒット商品が生まれると、わずか数週間から数ヶ月で海外から安価なコピー品が流入します。特許庁に商標や意匠を「出願中」のステータスである期間は、まだ法的な排他権が確定していないため、その間に受けた被害についてプラットフォーム側の不作為(放置)を追及することは法的に困難です。


したがって、「製品を市場に投入する前に、商標や意匠の出願(早期審査制度の活用を含む)を完了させ、権利化の目処を立てておくこと」が、現代のECビジネスにおいて何よりも優先すべき防衛策なのです。


なお、スタートアップ企業は、特許出願後、スーパー早期審査などの早期に権利取得を図れる制度の利用ができます。スーパー早期審査を利用した場合、審査請求から審査結果を得るまで約1ヶ月です。うまく行けば2ヶ月程度での権利化の可能性も十分あります。

このような制度を利用することも視野にいれて知財戦略を進めることも重要ですが、あらかじめ権利化する時期を計算して出願することも重要です。




おわりに:当事務所が貴社の「EC知財ポートフォリオ」を構築します


ECプラットフォームでの模倣品対策は、単一の権利だけでは防ぎきれないケースも多々あります。

ブランドの信用を守る「商標」デザインの模倣を防ぐ「意匠」独自の機能を真似させない「特許」これらを組み合わせた「知財の網(ポートフォリオ)」をあらかじめ張っておくことこそが、プラットフォームを迅速に動かし、自社の売上を守る唯一の方法です。


「これからオリジナル商品をECで展開したい」


「模倣品対策を強化したい」


とお考えの事業者様は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

貴社のビジネスモデルに最適な知財防衛戦略を、出願から権利行使までトータルでサポートいたします。


----------------------------------------------------------------------

弁理士法人エピファニー特許事務所

住所:東京都中央区日本橋横山町3-13

電話番号:03-6824-7924

----------------------------------------------------------------------