自身のアイデアを公開してしまっても、1年以内であれば、新規性喪失の例外の適用を受けることで、権利化することができます。それにあたり、
・出願の願書に例外適用を受ける旨の記載をすること
・出願から原則30日以内に証明書(併せて申請書)を提出すること
といった手続きが必要になります。
新規性喪失の例外の適用を受けるための証明書の作成は、補正ができないため、軽微な不備であっても致命的になる可能性があり、神経をすり減らす仕事でもあります。
これらの書面の作成は、大手の事務所であれば、慣れたパラリーガルが行うことになるのでしょうか・・・。慣れていても、願書ほど定型的な内容ではなく、また、特許庁から公開されているマニュアルの事例に合致しないケースもあるでしょう。不備が許されないので、重圧は結構大きいのではないでしょうか。
また、中規模・小規模の事務所であれば、出願を担当した技術者自身がこれらの書面を作成するのだと思います。普段からこういった作業を頻繁に行うことはないと思いますので、都度、マニュアルやQ&A集を精読することになり、個人的な経験としても、負担は大きいと感じています。
証明書の記載では、特許を受ける権利を有する者が移転されていると、それに応じた記載が必要になり、それが公開前か公開後かでもまた変わってきます。また、それぞれの日付の情報も盛り込む必要があるので、出願人に確認する必要があります。伝達漏れや伝達ミスも十分に考えられるため、注意を払わなければならない箇所が多いです。なお、公開月がわかっても公開日まではわからない場合、月の初日が公開日と推定される運用がされるとか、押印は不要になっているとか、そういった緩やかな運用もありはしますが。
以前、お世話になっていた事務所では、書面に誤りがあり、叱られた経験がありますが、この書面は補正が効かない一発勝負の側面が極めて強いので、チェッカーの精神的なプレッシャーもかなり大きいと思われます。
下記URLの資料には、意匠において、新規性喪失の例外の適用の手続きを受けたのにも関わらず、自己の出願前の公開意匠によって拒絶されたことに関する報告がされています。
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/isho_shoi/13-shiryou.html
近年は、新規性喪失の例外の適用の手続きがあった出願が、年間、2000~2500件ほどあり、2021年ベースですが、新規性喪失の例外の適用の手続きがあった出願のうちの158件程度が、自己の出願前の公開意匠で新規性を喪失しているという報告が出ています。このため、出願人や事務所が新規性喪失の例外の適用の手続きをしても、数%は拒絶されているということになります。意匠は、外観そのものなので、公知になりやすいとは言え、かなりシビアな数字だと感じます。
この制度は、出願人にとって助かる制度だとは思いますが、手続き的には、出願人や事務所にとって負荷が大きく、かなり神経を使うというのが正直なところです。
証明書を後出しして追加することや、証明書の補正が認められるよう法改正があることを期待します。
弁理士法人エピファニー特許事務所
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