特許明細書の作成でふと思うこと2

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特許出願の書類の作成は、どこから着手するのか、という問題があります。


クレーム(特許請求の範囲、請求項)から作成する流派や、明細書(図面)から着手する流派が存在するようです。基本的に、どちらが優れた流派というのはないはずで、好き好きだと思います。


私は、クレームから作成する派です。

クレームを作成することで、目標とする権利範囲の大きな枠組み、中位のサイズの枠組み、・・・が順次定まるので、概念の包含関係を掴みやすく、結果として頭の整理整頓が進む気がしています。


頭が整理できている状態というのは、この仕事において、非常に重要でこれができていないと、(私は)書き進めることができないことがとても多いです。ですので、概念の包含関係や論理の枠組みがわかるまで、面談でじっくり話を伺い、分からないことがあれば質問をすることになります。


仕事のスピードと品質は両立する、というフレーズをみかけることがありますが、高機能ツールや、根性論の側面はもちろんあるとは思いますが、頭の整理ができている状態にどれだけ速く到達できるか、ということが本質なのではないかと考えています。これができていないと、抜けや漏れ、論理的破綻が気になってしまい、不安が先行して筆の速度が鈍る気がしています。特にソフトウェア系の発明は、記載量が膨大になることが少なくないので、事故を防止するためにも、とにかく論理的な整合性がとれた状態にしておくことが大事だと感じています。


また、クレームは最も重要な書類ですが、これが作成できた段階で先行してクライアント様に確認してもらうことができ、方向性に大きな誤りがないかの意思疎通を図ることができるのも大きいです。出願書類全体が完成してから初めて書面をチェックとなると、はやくて2週間、通常だと1ヶ月程度はかかるので、待っていると、発明者様や知財部様の記憶が薄らいでしまう、といった懸念がありますが、これを回避できるのもメリットだと思います。



10年位前は、明細書から書くということもトライしてみた記憶があります。

ですが、あまり長続きはしませんでした。確かに、明細書の実施形態は、例えば実製品の形状やその作用・効果を事実ベースで淡々と記載する箇所が多いはずであり、そういったことは既にわかっていることなので、粛々と書き進めることができます。しかし、権利範囲の外縁としてのクレームをまだ言語化していない段階なので、何をどの程度のウエイトで記載するべきかが、判断しにくく、タイムマネジメントがとても難しい印象を持ちました。

例えば、構造系の発明だと、図面の構造的特徴を言語化していくことになりますが、書こうと思えば、末節的な部分を延々と書くこともできるため、実りが乏しい内容に時間を費やしてしまう可能性があがってしまう気がしています。


どちらの流派が正義というわけでは全くないですが、明細書を書き始めてふと思ったのでブログにしてみました。

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